2004年8月4日号
復刻第23弾!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2004.08.04 Vol.994 ━━━━━ ■□■□■ ■□■□■ 日刊「WEBのツボ!」 □■□■□ http://www.soho-union.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 配信部数 3267部 「続々 システムはオブジェクト指向 Ruby & Flash」(#003) 福井修@Fsys.NET 【○】本日のお題 「 リッチクライアント は Flash ActionScript 」━━━━ もう8月。それにしても暑いですね。 Fsys福井システムリサーチの福井です。 今回は、リッチクライアント と Flash ActionScriptまわりの動向の話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ リッチクライアントの動向情報 続き ──────────────────────────────────── 前回 「 リッチクライアント と簡潔・軽量化 」注1)にてEclipse3.0へのうねり を紹介しました。あとInversion of Control(IoC:制御の反転)と Dependency Injection(DI:依存性注入)の話しも出ました。 その後もIBMが「Eclipse 3.0基盤のモジュラー型開発環境」を発表 注2)したり、 「フレームワークをベースとしたプラグイン・アーキテクチャを応用し、表計算 やインスタント・メッセンジャーといったアプリケーションを複数のOS上で稼働 させる『Workplace』プロジェクトを推進している。」方向にピッタリ乗って、 さらにRationalの技術統合のタイミングとも相まってEclipse 3.0には勢いがあ ります。 IBMツール(IBM WebSphere Studio)では、Javaの本流の動向であるJavaServer Faces(JSF)も取り込んでおり、JSFがオープンソースEclipseでも普及すると Webフロントエンド部分開発のStrutsは、賞味期限を終えることになります。 まあ そうではあるのですが、 開発環境が進化しても、それが普及するには時間がかかる のが 世の常 なので、それなりに普及したStrutsはしばらく残ることでしょう。 PHP5が公開されても、PHP3ですらまだまだ現役ですし。VB(.NETでない方)や .asp(.aspxでない方)もまだまだ現役ですし.. オープンソースは、望むところなので、オープンソースな Eclipse RCP(Rich Client Platform) がリッチクライアントを席巻するのはうれしいのですが、も う少し時間が必要でしょう。(起動時間も速くなって欲しいです :-p) Eclipse RCPは、キャズムで言うところの [1]Innovators 革新者段階が今で、も うすぐ 次の[2]Early Adopters 初期導入者が飛びつきます。さらに様子を見て いた [3]Early Majority 初期大衆段階 が来て そのあとでやっと[4]Late Majority 遅延大衆段階に至る訳です。Laggards 落伍者も出ます。注3) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ Flash ActionScript まわりの動向 ──────────────────────────────────── Flash ActionScriptまわりの動向も見ておきましょう。 単純Flashは、[2]Early Adopters 初期導入者段階から[3]Early Majority 初期 大衆段階には、来ているでしょう。もう[4]Late Majority 遅延大衆段階へ広が っているのかもしれません。iモード Flash も遠い昔の話 注4) 。 ではサーバサイド連携Flash は、どうなのでしょう。 サーバサイド連携Flash は、まだまだ[2]Early Adopters 初期導入者段階でしょ う。ハイテクの落とし穴(Chasm)を超えようという段階です。 au 携帯電話の新機種に Flash Lite 1.1 搭載 注5)で、このバージョンで遂に携 帯でもネットワーク対応(LoadMovie and LoadVariable commands をサポート)し た 注6) ようです。(^-^v これで、サーバサイド連携Flashも大衆化への緒に就いたことになります。 #au は持っていないけれど、ダブル定額とかいろいろ魅力ですね。早く番号持ち 運び可能になって欲しいものです。 また野村総研が『オブジェクトワークス』というフレームワーク 注7)に「 NRI のリッチ・クライアントの取り組み」注8)で「R5.5では新たに『オブジェクトワ ークス/CORE Flash』を追加し、MacromediaFlashに対応」とリッチクライアント はFlashで、という切り口でアピールしています。 野村総研は、eclipseへの取り組みは早かった 注9)のですからJavaエンジニアが 育っているのでしょうから順当にJavaでSWT(Standard Widget ToolKit:Eclipse プロジェクトから提供されているGUI作成用ツールキット)やSwing(JDK1.2 から 標準でサポートのGUI 開発のための API セット)でのリッチクライアントを掲げ るのが自然です。それなのに、あえてActionScriptを学習するコストを払ってで もFlash を担いだのはなぜでしょうね。参考になります :-) 「第4回 J2EEカンファレンス」(2004年7月14日開催)では,「Webアプリケーショ ンの革新 ──JSFとEoDツール」と題して,JSF(JavaServer Faces)ツールに関 するパネル・ディスカッションが行われ、デモでは「バリュー・バインディング 」と「メソッド・バインディング」がツールの上でドラッグ&ドロップで扱えて EoD(Ease of Development,開発容易)が進んでいるようです。注10) そして何と JSF でのUIコンポーネントでは Flashで作ったUI部品も扱うことが できるそうです。 Sun Java陣営が、Flashを無視できずに寄ってくる構図です。 リッチクライアントの実現には Flash ActionScript が優れていると評価されて いる訳ですね。 マクロメディアの解説・動向もチェックしておきましょう。 マクロメディアは、「リッチクライアント」を「リッチインターネットアプリケ ーション(RIA)」と称してます。イントラ向けは、眼中にないようで :-p 「 リッチインターネットアプリケーション (RIA) 構築のための新機能」注11) にてFlash MX 2004 向けの新しい記事があります。 以前(2004.4.2) チェックした 注12) サーバサイドフレームワーク『Flex』は、 その後、『Brady』というツールを子分に揃えて 注13) MXML言語(XMLベースに 拡張)で記述したプログラムを .swf に変換するしかけを提供していて、日本語 版は、今年中には出るそうで、マクロメディアがどんな注力か拝見させて頂こ うと思います。またColdFusionを担いだところは、どうするのか興味津々です。 『Central』というローカル .swf 実行環境も昨年MAX 2003で話題になって注15) 以降日本語版の予定はまだ無いそうでどうなるのやら。 そしてEclipse上でMXMLページ作成用プラグイン『Partridge』が 開発されてい るようですし 注16) Flash ActionScript と Eclipse RCP のリッチクライアン トをめぐる動向には、目が離せません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ まとめ ──────────────────────────────────── 今回は、リッチクライアントの続きと Flash ActionScriptまわりの動向をチェ ックしてみました。 リッチクライアントは、まだまだこれからが、本番 でしょう。 Webデザインからの流れと、システムからの流れ、そして、ニーズに応えるマー ケティングからの流れ、が「リッチクライアント」でぶつかり合って、次のステ ージへ進むという感じですね。 使う方は、便利になって良いわけですが、作る方は毎度 熾烈な競争ですなぁ。 リッチクライアントのしかけ作りには、いろいろな手段があるので、オブジェク ト志向スクリプトのRubyとActionScriptの組み合わせは、とてもエレガントだと 感じますが、ほかの選択肢といろいろ評価・比較してみるのが良いですね。 予算規模の大きいところでいろいろ試行錯誤してもらって知見を残して頂いて、 末端でいつも苦労している小さなところは、おいしいところをおいしく頂きたい ものです。 おまけ ) 前回のInversion of Control(IoC:制御の反転)と Dependency Injection(DI: 依存性注入)の話は、とっつきにくいのですが、羽生さんのところ 注17)で解説 がありました。興味を持って何度も繰り返し接すると次第に良く見えてきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ※ 注釈、資料、参考情報 ──────────────────────────────────── 注1) 続々 システムはオブジェクト指向 Ruby & Flash (#002) 「 リッチクライアントはどうなる?!」2004.07.21 http://www.melma.com/mag/02/m00020302/a00000781.html 注2) IBM Eclipse 3.0基盤のモジュラー型開発環境 2004.07.21 http://www.atmarkit.co.jp/news/200407/21/rational.html 注3) キャズムについては、以前↓でも取り上げました。 ソフトエンジニアの雇われない生き方 (#004) 「技術まわり」2003.09.23 http://www.melma.com/mag/75/m00094675/a00000037.html ↓に 良い図が出ています。 ブログはキャズム(ハイテクの落とし穴)を越えてブレイクするのか? http://www.goodpic.com/mt/archives/000227.html 注4) システムはオブジェクト指向、そしてRubyで(#009) 2003.04.03 の中で「NTTドコモ、505iシリーズに『Macromedia Flash』搭載」話題 http://www.melma.com/mag/02/m00020302/a00000507.html 注5) Macromedia, KDDI と Flash Lite で戦略的ライセンス契約を締結 KDDI、au 携帯電話の新機種に Flash Lite 1.1 を採用へ 2004.7.12 http://www.macromedia.com/jp/macromedia/proom/pr/2004/mm_kddi.html 注6) Macromedia - Flash Lite1.1 http://www.macromedia.com/software/devices/products/flashlite/ 注7) NRI オブジェクトワークス http://works.nri.co.jp/ 注8) NRIのリッチ・クライアントの取り組み http://itpro.nikkeibp.co.jp/as/nri/03.html 注9) NRI「eclipse」などオープンソース関連ツールの日本語ガイド公開 http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0708/nri.htm 注10) 実装の進むJava標準のUI開発フレームワーク「JSF」2004.07.15 http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/topic/2004/07/15/2856.html 注11) リッチインターネットアプリケーション (RIA) 構築のための新機能 http://www.macromedia.com/jp/devnet/mx/flash/articles/mx2004.html 注12) 続 システムはオブジェクト指向 Ruby & Flash (#006) 2004.04.01 「入力チェックと正規表現」 http://www.melma.com/mag/02/m00020302/a00000732.html 注13) ビジネスFlashの最右翼となれるか? Macromedia Flex http://www.atmarkit.co.jp/news/200406/24/macromedia.html 注14) Design Wedge | backnumber No.76 http://www.karadesign.com/designwedge/backnumbers/0076.shtml 注15) 新RIAツールが登場、エンタープライズ開発の革命児となるか http://www.atmarkit.co.jp/news/200311/21/max2003.html Macromedia、『Central』で『AIM』および『ICQ』の利用を実現 http://japan.internet.com/webtech/20031120/12.html Macromediaテクノロジーがもたらす近未来デジタル体験 (2) スペシャルプレビュー・もうすぐ会えるインターネットテクノロジー http://www.wince.ne.jp/snap/ceSnapView.asp?PID=1610 注16) Flashが標準クライアントになる日 2004.03.31 http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20040330/142131/ 注17) はてなダイアリー - はぶにっき 2004.07.23 http://d.hatena.ne.jp/habuakihiro/20040723 【プロフィール&近況】 福井 修 ( FUKUI Osamu ) o-fukui@po.iijnet.or.jp 福井システムリサーチ http://fsys.net/ 主幹。システム構築歴28年。 システム構築エキスパート 日本Linux協会、神戸商工会議所、情報処理学会、関西IT共同体 会員 関西ソーホ・デジタルコンテンツ事業協同組合 監事