(#007) 2003.11.04

復刻シリーズ第47弾!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003.11.04 Vol.067 ━━━━━
 ☆☆★★★
 ☆☆★☆☆ 日刊「SOHOのツボ!」
 ★★★☆☆              http://www.soho-union.com/soho/
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                                 配信部数 805部
「ソフトエンジニアの雇われない生き方」(#007)   
                                                          福井修@Fsys
【○】本日のお題   顧客 (ベンダとユーザの距離)  ━━━━━━━━━━━━

こんにちは福井です。もう11月になってしまいました。

10月31日,11月1日と関西オープンソースフリーソフト2003が開催されました。
http://k-of.jp/
私は、Rubyコミュニティで自主企画「 オブジェクト指向 Ruby の実践例 紹介」
http://k-of.jp/1101.htmlで参画しました。結構立ち見の盛況でしたので、うれ
しかったです。また来年もやります(たぶん^^)ので、見逃した方は、来年どう
ぞ。

前回 注1)  『  家庭は志の本拠地。増えよ市民起業家クリエータ仲間! 』
と書きました。

本日は、顧客 というテーマでベンダとユーザとの距離についてです。

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■ ベンダとユーザ
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 何かを提供する人がベンダで、それを利用してお金を払う人がユーザです。

 お米を作るのは、農家で、そのお米を食べる人がユーザです。

 医療サービスを提供するのが医者で、患者はユーザです。

 知識や知恵を提供するのが先生で、生徒はユーザです。

 システムを作るのは、エンジニアで、そのシステムを使う人がユーザです。

 単純な構図なのですが、お金の受け渡しが絡んだり、いろいろな状況で、途中
にいろいろな機構が介在することになります。

ユーザとベンダと言う関係と発注者と受注者言う関係とは、必ずしもイコールで
はありません。顧客は、誰かというのは、重要なポイントです。

ユーザとベンダの間には、介在者が存在することがあります。ニーズがあって、
それに応えるためにいろいろなビジネスが存在する訳で、途中のサービスであっ
ても価値を生み出していれば存在価値はあります。

イチローや松井の存在は、野球を介して国境を越えて、人に感動を与え、そして
大きくお金も動くわけです。彼らのプレーを、見る人に提供するには、様々なビ
ジネスが存在します。

歌がとても上手であれば、人は、お金を払ってもその歌を聴こうとします。

CDが売れると、演奏者や、作曲家や作詞家にもお金がはいりますし、レコード会
社が、潤います。

レコード会社がベンダで、部品・材料として、曲や演奏を調達して売り出すと
いうモデルが存在しますが、インディーズというモデルも存在します。

ユーザとベンダの関係には、様々なビジネスモデルがあり得るわけです。
直接モデルもありますし、いろいろなエージェントが仲介するモデルもあります。

既存のビジネスモデルのなかで、どう位置づけるかという視点もありますし、今
後、どんな新しいビジネスモデルを構築するかというテーマにも、興味深いもの
があります。


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■ 2階から目薬
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 ユーザとベンダには、いろいろな『 距離 』があります。
 
 現場 ─(1)→ 現場管理者 ─(2)→ スタッフ部門 ─(3)→ スタッフ部門責任者
─(4)→ 発注部門 ─(5)→ 一次会社営業 ─(6)→ 一次会社技術 ─(7)→
一次会社発注部門 ─(8)→ 二次会社営業 ─(9)→ 二次会社技術 ─(10)→
二次会社発注部門 ─(11)→ 三次会社営業─(12)→ 三次会社技術─(13)→
    :
開発管理者 ─→ 開発者

規模が大きくなると、関係者もどんどん増えてゆきます。
総額1千億のプラント建設とかだと、相当なものです。私のエンジニアとして最
初の仕事は、八幡の製鉄プラントでそんな規模のシステムでした。

現場のニーズが開発者に伝わるには、なかなかの距離がありました。
「2階から目薬」 どころの距離ではありません。

今 小規模の会社のシステム構築だと

現場の社長 ─→ 開発者(私)

「こんなんが欲しい」 ─→ 「こんな画面が出来ました、こう操作します。どう
でっか」

たぶんこれが、ユーザとベンダの最短『 距離 』のシステム構築でしょう。

現場のニーズをしっかりとらえ、かつまわりも見渡せて、お金も決済できるキー
マンが、システム全体を把握し、かつプログラムの実装もできるエンジニアに、
直接発注する。

というパターンが成立すると、無駄がありません。やる方も、気持ちいいもので
す。

まあ一般には、 ユーザの中で、ニーズのある現場とお金を握る部署が別で、ま
たいろいろ横から口だしするところが別にあったり、またベンダの中で、営業と
技術がコミュニケーションとれていなかったり、設計する人と実装する人とで齟
齬があったりいろいろありがちです。


インターネットで、産地直送で農産物のおいしいものが安く手に入るようになり
ました。私も玄米を買いましたが、マーケットで買うより相当安いです。
途中のオーバヘッドが無いのが、有利です。

インターネットでの仕事のマッチング(発注したい人と受注したい人との出会い)
もどんどん進んでいます。

エンドユーザと実ベンダの距離は、もちろん規模によるわけで、超高層ビルは、
大手建設業者が建てる(実際には、沢山の下請けが)しかないでしょうが、中層
のビルは、中堅業者が、そして、きめ細かい注文建築には工務店(大工さん)が
向いているでしょう。システム構築も同様ですね。

実際の例えば、中企業のオフコンリプレースやPCサーバ構築の何百万〜何千万の
案件は、「2階から目薬」でなくユーザが実務をこなすSOHO(や「市民起業家」
注2))と直接取引するのが、有利でしょう。

SOHO(や「市民起業家」)直接では心配というユーザには、事業協同組合経由とい
う方式でリスク回避するというのもありです。

途中経路は、出来るだけ少ない方が無駄なオーバヘッド(=コスト)が避けられ
るので、 エンドユーザ←→実ベンダは近い方が有利です。



本日のツボ

   『  エンドユーザ←→実ベンダは、近い方が双方に有利  』


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※ 注釈、資料、参考情報
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注1) http://www.melma.com/mag/75/m00094675/a00000057.html
注2) 「市民起業家」という言い方は、少し大げさですが、前回せっかく紹介しま
     したので、使っておきます。趣旨としては、下記「バザール」の感じでしょ
     うか。何億掛けて緻密なシステムを作るのと、見かけの費用を掛けずにうま
     くお手軽(かつ効率よく)にシステムを作るのでは取り組みが違う訳ですし。
     伽藍とバザール Eric S. Raymond 著 山形浩生 YAMAGATA Hiroo 訳
     http://cruel.org/freeware/cathedral.html


【プロフィール】
福井 修 ( FUKUI Osamu )o-fukui@po.iijnet.or.jp
福井システムリサーチ http://fsys.net/  主幹。システム構築歴27年。
システム構築エキスパート
日本Linux協会、神戸商工会議所情報処理学会 会員
関西ソーホ・デジタルコンテンツ事業協同組合デジタルハリウッド三宮校 Java講師